市議会かわらばん第66号(2005年11月)
9月議会各個質問報告
10月25日、島根・鳥取両県知事が常田農水副大臣と会談し、森山堤防の60b開削を要請しました。それに対して、常田副大臣は農水省が事業主体として実施する姿勢を示しました。干拓事業の後始末として最低でも森山・大海崎両堤防を200bずつ開削するように求めてきた地元の願いは届かず、農水省は森山堤防のみ60b開削して、この地域から引き上げようとしています。
本庄水域だけを見れば、森山堤防60b開削だけでも水質改善効果と漁業振興が期待できますが、中海全体および宍道湖の水質改善と漁業振興のためには、両堤防開削など、中海に反時計回りの潮流を回復させるための施策が必要です。また、干拓堤防建設の影響で上昇した弓ケ浜半島沿いの水位を下げるためにも、両堤防の200b開削は必ず実現しなければなりません。両堤防開削は大橋川拡幅議論の前提でもあります。
森山堤防を60b開削して架橋するための事業費は約12億円(国9割、島根県1割負担)とのことです。一方、両堤防を200bずつ開削して架橋した場合の事業費は40億円と説明されてきました。片山知事は「開削幅は広いほどいいが、国の財政事情もある」と言っています。しかし、斐伊川治水計画は、ダム建設に3000億円、放水路建設に2000億円、大橋川拡幅に1000億円(見込み)といわれています。中海の治水にとっても開削幅が広い方がいいのですから、40億円は他の事業に比べたら安いものです。
弓ケ浜半島沿いの治水不安解消や中海全体の水質浄化について、本質的議論をしないままになされた政治的決着ですが、地元はこれで良しとするわけにはなりません。これからも、住民の治水不安を解消し、豊かな中海をとりもどすために、さらに取り組んでいきます。
前号の「市議会かわらばん」で案内した米子市財政健全化プランについての勉強会で、参加者から貴重なご意見をたくさんいただきました。それを踏まえて質問しました。
(問)財政悪化を招いた市の責任の総括と謝罪がないのはおかしい。流通業務団地や駅前地下駐車場などむだな公共事業に対して、どのように総括しているのか。
(市長)その時々の要請に沿って、総合計画にのっとり議会審議を経て実施されたものと理解している。
(問)細々とした市民負担増を検討するより、米子空港滑走路延長や何十年も前に定めた道路計画を廃止も含めて再検討する方が有効と考えるが、見解は。
(市長)米子空港滑走路延長は米子市の発展のために必要不可欠なプロジェクトであると考えている。都市計画道路の見直しは、本年度研究することにしている。
(問)プランに対する市民からの意見、新たな提案などを求めることが大切。プランへの市民参画をどのように進めるのか。
(市長)市民説明会を開催し、ご意見をいただく。また、プランの内容は今年度策定する行政改革大綱と実施計画の中に取り込むことになるが、大綱や実施計画策定段階でも市民のご意見をいただく。
みなさんは、市長の答弁をどう思われますか。
流通業務団地は、地域経済の活性化に資するとして、事業費88億円(その他に道路建設などに25億円)かけて整備されました。「第二の崎津工業団地になるのではないか」と、議会でも慎重な意見が多かったのですが、「すでに60%の分譲見込みが立っている」として実施されました。2003年度で完売する計画でしたが、2004年度末でも36%しか売れていません。
駅前地下駐車場は1996年に40億円余りで建設されました。私は、「一台の駐車スペース建設に1500万円もかけて、決して採算はとれない」と反対しましたが、十分な議論もないままに議会も同意しました。指摘したとおり、今では毎年1億円以上の赤字になっています。
このようなむだな事業を行ってきたことに対する反省が無いから、また同じ過ちを繰り返そうとしているのです。
市長は、「滑走路延長は必要不可欠なプロジェクト」と答弁しましたが、本当にそうでしょうか。滑走路延長は、東京便の利用者が2008年に50万人を越す予測の上に、飛行機を大型化しないと対応できないとして事業認可されました。しかし、2004年度の利用者は39万6千人で、4年前に比べて1万9千人余りの増にしか過ぎません。今後3年間で10万人以上増えるとは、とても考えられません。延長理由が危うくなったので、最近では、冬季の滑走路凍結による欠航が解消できると、別の理由を言い出しました。しかし、2004年度の欠航数51便に対し、冬場の欠航は13便だけです。答弁によると、滑走路延長とJR線、道路の迂回の総事業費は130億円、それに周辺地域への見返り事業が61億円です。合計200億円近くのお金を使うより、13便欠航したっていいではありませんか。
また、「都市計画道路の見直しは研究する」などとのんきな答弁をしていますが、建設部長答弁によると、残りの整備路線14キロの事業費は544億円、100メートルあたり約3億9千万円にもなります。地図のように、三本松、旗ケ崎、上後藤の住宅密集地にも3本の道路計画があります。一軒あたりの立ち退き料は2千万円といわれるので、大変な費用がかかります。費用だけでなく、環境の視点、安全の視点からも、人と車の棲み分けを考えることが大切です。計画決定済みということにこだわらず、地元も含めて、長期的視点に立ったまちづくりの議論をする必要があります。
原発安全協定の締結申し入れを!
中国電力は9月12日、島根県と松江市に対して、島根原発2号機で計画しているプルサーマルについて、事前了解の申し入れを行いました。プルサーマルとは、ウランとプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を一般の原子炉で燃やすことですが、@(プルトニウムはウランに比べて反応性に富むので)制御棒の効きが悪くなる。A原子炉内の水の温度や状態の変化に過敏に反応するようになる。など大変危険だといわれています。プルトニウムは100万分の1グラムで肺ガンを引き起こし、「人間が作り出した悪魔の元素」と言われます。しかも、2万4千年経って放射能がやっと半分になるので、いったん汚染されると半永久的に回復できません。専門家の計算によると、事故で放射能が放出された場合、米子はほとんど100%の人が死んでしまいます(地図参照)。
プルサーマルは世界各国でもほとんど実施されておらず、国内でもどこも住民の反対で行き詰まっています。安全性を説得できない国は、受け入れた自治体には60億円の交付金を支給すると発表し、いつものパターンのように買収工作に乗り出しました。
プルサーマル計画は米子市民の安全に関わる重要問題であるにも関わらず、現状では、米子市としてプルサーマル計画に対して正式に意見を述べる機会は全くありません。米子市は以前から中国電力に対して、安全協定を締結し、施設変更等に対して事前協議を行うよう求めてきましたが、中国電力は拒否しています。
この機会にあらためて申し入れることを求め、市長もそのようにすると答弁しました。
(11月2日に、米子市が中国電力に申し入れました―新聞記事参照。)
原発防災計画の早期策定を
国の定めでは、原発から10q外では原子力防災対策は必要ないことになっていますが、阪神淡路大震災を契機に、原発から40qも離れている兵庫県が原発防災計画を策定しました。島根原発から最短で17qしか離れていない鳥取県でも原発防災計画を策定するよう求めてきましたが、県は、西部地震後の2001年度にやっと策定しました。それを受けて、米子市も原発防災計画策定費を2002年度から毎年計上していますが、一向に進展が見られません。その理由と、策定に向けての考え方を尋ねました。
「県の緊急時モニタリング計画とマニュアルの策定を待って作成するために延期していたが、県の見通しが不透明なので、現状で可能な限りの内容を盛り込んだ原子力災害対策編を、年度内をめどに策定したい」との市長答弁でした。
鳥取県の原発防災計画は問題があります。例えば、米子には室内退避等の措置が必要な放射能は到達しないという前提で作られています。宮城県ではチェルノブイリを一桁上回る放射能放出量を想定した訓練を実施していますが、考え得る事態を想定した計画を立てなければいざというときに役に立ちません。また、対策本部の立ち上げ基準は福井、愛媛県等の基準の100倍の放射能レベルになってから立ち上げることになっています。屋内待避も福井県の2倍被曝してから行うことになっています。
そこで、県や国に準じて作るのではなく、市民の生命・財産を守るために万全の計画を作ること、および、市民参加で策定することを求めました。
「言われたことを念頭に置いて防災計画を策定する。策定メンバーに一般市民も加わってもらう」という市長答弁でした。