2003年9月議会報告
9月定例市議会は10日〜26日まで開催され、私は各個質問で緊急雇用対策事業委託金不正受給問題と、議員による口利き防止対策について取り上げました。
緊急雇用対策事業委託金の不正受給が発覚
失業者の増大で雇用問題は深刻です。これに対処するために、国は一昨年度から3年計画で約3,500億円の緊急雇用対策事業を始めました。具体的には、都道府県や市町村が予算を組んで雇用創出事業を自ら行ったり、民間に委託して行います。米子市でも昨年度は15件(合計約1億6,000万円)の緊急雇用対策事業を行いました。
そのひとつが、医療法人『有眞会』に委託した「こころの健康相談窓口事業」です。昨年度の委託費は約5,400万円で、今年度も引き続き約4,670万円で委託されています。事業内容は、心の悩みを抱えている人に対して24時間体制で電話や面接相談に応じ、自立への手助けを行うというものです。そのために専門相談員と記録作成などの補助員を雇用したり、訪問相談のための車などの経費として委託費が支払われます。
ところが、『有眞会』は雇用した人を委託事業とは関係ない別部署や別会社で働かせたり、車や事務用品なども流用したりしていたことが、従業員からの内部告発で発覚しました。それに対して米子市は調査委員会を設置して調査を進めていましたが、雇用者を委託契約に違反して働かせた事実が認められたとして、人件費分など約1,211万円の返還を求めました。しかし、「契約内容に関する認識の甘さがあったものの、反省してお金を返した」として、違法行為は問わないことにしました。
『有眞会』の言い分は「新規雇用さえすれば、別の仕事をさせてもいいと思っていた」というものです。委託事業と全く関係のない仕事をさせてお金がもらえるのであれば、誰でも事業を受けます。こんな言い訳が通ることが不思議です。『有眞会』の言い訳が嘘であることは、証拠隠滅のために数々の工作をしていることからも明らかです。例えば、委託事業で働かせたように見せかけるために勤務表やタイムカードの改竄などを行っています。本当にいいと思っていたのであれば、証拠隠滅などしないはずです。
さらに、最初からお金をだまし取ろうとしたとしか考えられないようなこともしています。すなわち、別の事業で雇用し、全く「こころの健康相談窓口事業」で働いたことのない人の名前で委託費を受領したり、委託事業のための車や備品などを別会社などで使用したりしています。『有眞会』の言い訳によっても説明がつきません。
人のお金を取ろうとしてばれた時は謝ったら済むというのであれば、モラルもなにもあったものではありません。
また、1,211万円の返還請求額も妥当とは思えませんが、強制調査権がないので調査委員会としては調査に限界があったということです。そうであるならば、強制捜査権限を持つ警察に捜査をゆだねるのが筋ではないでしょうか。
本会議や民生環境委員会で私はこれらの問題について質問をしましたが、市長や助役の答弁は歯切れが悪く、納得できるものではありませんでした。『有眞会』理事長の夫は連合鳥取の会長であり、市や県とのつながりも深く、市長や助役は事件発覚後に呼び出されて会いに行ったりしています。何か圧力が働き、事実関係がうやむやにされているように思えてなりません。
この問題は新聞にも掲載され、米子市で大きな社会的事件として関心を集め、多くの市民が成り行きに注目しています。市としては貴重な国民の税金がどのように扱われたのか、市民に対して説明責任があります。議会としても予算を議決した責任があり、徹底究明する義務があります。議員の中には、「『有眞会』はすでに社会的制裁を受けたのでこれ以上追及しなくてもいいのではないか」という意見がありますが、適正に使用されなかったお金は返してもらい、真相は明らかにしてもらわなければなりません。
みなさんは、どのように思われるでしょうか。
(本会議でのやりとりの抜粋)
■中川 調査委員会の調査結果と市長の対処方針について説明されたい。
■市長 @平成14年度の委託料のうち、他業務従事に係わる職員の人件費、他業務使用に係わる経費などの総額1,211万6,637円に県への補助金返還に伴う加算金相当額を加えて、有眞会に返還を求める、A平成15年度の委託契約は解除する、B市の担当者への処分を検討する。C告訴については、有眞会の対応を見た上で検討する。
■中川 金を返せば刑事事件にしないということか。
■市長 調査委員会に法的側面も含めて検討してもらったが、返還した場合には同会への刑事上の責任追及には及ばないこととされているので、その方針に従う。
■中川 他業務に従事させていたのではなく、雇用実態のない人の名前を使って委託金を受領していた例がある。悪意、詐欺ではないか。
■助役 悪意といえるが、刑法上の詐欺罪を構成するには、委託金受領時に意図がないといけない。調査委員会は不正に受給したという認定はしなかった。
■中川 タイムカード偽造や勤務表改竄は、元従業員も調査委員会で証言している。これでも悪意、犯罪性はないといえるのか。
■助役 刑法の基本は疑わしきは罰せずである。刑法上は財産損害が生じているかどうかを一連の行為として判断する。悪意があるかどうかだけでなく、総合的な判断をしなければならない。
■中川 金を返して終わりでは市民が納得しない。外務省は、不正に受給した250万円の補助金を返還した砂漠緑化NGOを告発した。米子市としても司法の手にゆだねるのが筋ではないか。
■市長 調査委員会の判断に従う。
野坂市長は職員倫理規程を制定し、9月1日から施行しました。市の業務に関係する団体や個人といっしょに会食したり、遊技をすることなどを禁止し、接待や物品の贈与なども禁止するという内容です。ただし、職務上必要なものや全く私的な関係のものは対象外です。市政に対する市民の信頼を確保するためにも必要な制度です。これまで私も何度か議会で提案してきましたが、いままでの市長は制定に消極的でした。
これで市政に対する信頼が少しは高まることを期待したいと思いますが、市民は職員に対する不信以上に政治家に対して不信を抱いています。職員採用や公共事業請負などに際して議員が圧力をかけているという批判が、常にあります。政治家による口利きについても対応策が必要です。
すでに鳥取県や熊本市、佐賀市、相生市などの自治体では、市議会議員、県議会議員、国会議員やその秘書からの要望を文書化する制度が始まっています。高知県では民間団体や一般県民からの要望も対象にすることを検討しています。どこもこの文書は情報公開の対象としているので、私利私欲がらみの要望(いわゆる「口利き」)は減ることが期待できます。
この機会に併せて制度化するよう、市長に提案しました。
「強要などの不当要求行為防止要綱もつくったので、要綱の見直しで対応するか、新たに制度をつくるのか検討したい」という答弁でした。
陳情・請願の審査結果
陳情や請願は市民の大切な権利です。議会で議案として正式に審議され、結果は市政に反映されます。一人でも提出できるので、おおいに活用してください
6月議会に米子市観光協会などから提出され、継続審議になっていましたが、本会議で賛成多数により不採択になりました。理由としては、建設しても採算がとれずに将来的に財政を圧迫すること、城山の貴重な自然(植物や鳥類、昆虫など)や文化財を破壊するおそれがあることなどです。保守会派の「しんせい」は観光のために建設すべきだとして不採択に反対しましたが、多くの議員が良識ある態度をとってくれました。
市長は6月議会で自動昇降設備設置の可能性を調査するための予算(266万円)を組んでいましたが、陳情不採択により議会の意思が確定したので、予算執行を凍結するようです。
多くの人が登りやすいように登山道は整備すべきという意見は多く、自然や文化財に配慮した整備方法の検討が必要です。
ギャンブル場設置反対陳情と素鳳コレクション移設陳情は継続審査に
今議会に皆生温泉関係の陳情が3件も提出されました。
ギャンブル場設置反対陳情は地元の小・中学校3校のPTAから提出されたもので、後楽園ホテル跡に計画されている「大規模アミューズメント施設」に反対してくださいという内容です。ルーレットなどのギャンブルができる「カジノ」をつくるために業者が構造改革特区申請を行っていましたが、警察庁は「刑法で禁止する賭博罪との評価を受けるおそれがあるから困難である」として認めませんでした。私を含めて何人かの議員は陳情の採択を求めましたが、業者が新たな提案を考えているようなので状況を見守るとして、賛成多数で継続審議になってしまいました。
客引き行為規制陳情は皆生温泉おかみ会などから提出されたものです。皆生温泉には西日本一といわれるほどソープランドなどの性風俗店が多くあり、夜になると店の前に客引きが立つので観光客が気楽に歩けないと、以前から問題になっていました。皆生温泉の評判が悪い一因でもあるようです。この陳情は全会一致で趣旨採択になりました。9月議会後には、規制条例を作っている武蔵野市を会派で視察に行きました。いろいろと困難な問題もあるようですが、皆生温泉を家族連れで楽しめるような場所にするためにも何らかの規制が必要です。
素鳳コレクション移設陳情も皆生温泉おかみ会などから提出されたもので、山陰歴史館に保管してある市民から寄贈されたひな人形(約2,000点)を、皆生の観光センターに移設、常設展示して皆生温泉の活性化に役立てて欲しいというものです。しかし、観光センターに保管・展示するためにはどれくらい経費がいるかなどを研究する必要があるということで、継続審議になりました。私としては、素鳳コレクションは下町地域で活用する方が歴史的にも、また観光資源としてもふさわしいと考えています。
軽度発達障害とは学習障害、注意欠陥/多動性障害、高機能自閉症などの障害をいい、物事に集中しにくい、他人との関わりが困難、忘れ物やうっかりミスが多い、状況に関係なく自分の世界に入り込んでしまうなどの特性を持つ障害のことだそうです。学校や社会での認知度が低いために、本人・家族は将来への不安を抱えておられます。軽度発達障害児親の会(はっぴーえんじぇる)から、専門的な研修を小・中学校の教職員に行って欲しい、該当児童・生徒やその周辺児童・生徒に対して適切な対処ができるサポートチームを学校内につくってほしいなどの陳情が提出され、全会一致で趣旨採択しました。
公職選挙法を改正して18歳選挙権を実現するように国に意見書を提出してくださいというもので、民主青年同盟鳥取県委員会から請願があったものです。「権利ばかり主張して義務を果たしていない」などの反対意見もありましたが、賛成多数で趣旨採択し、意見書を政府に提出しました。
中海
堤防開削効果も認めず
9月5日、松江市で第四回「中海に関する協議会」が開催されました。この会は、大橋川拡幅問題や干拓淡水化中止後の中海の課題を協議するために、鳥取・島根両県と農水省・国交省で構成されています。
鳥取県は当日、農水省の参考シミュレーションでも堤防開削と中浦水門操作で水質がよくなっていることを主張しましたが、農水省は20%くらい水質がよくなっても変化がないと評価しているとして、水門撤去の方針は変えませんでした。そして、来年秋に江島大橋が完成したら水門の撤去工事にかかり、平成20年に撤去を完了するという日程を発表しました。撤去費用は約80億円だそうです。
(財)宍道湖中海汽水湖研究所のシミュレーションでは、中浦水門操作、堤防開削、窪地の埋め戻し、浅場造成などの環境修復策を行えば、中海・宍道湖の環境はかなり改善するという結果が明らかになっています。中浦水門をつかってこのシミュレーションを検証してから、撤去するかどうかの方針を改めて検討しても遅くありません。もしシミュレーション通りの効果が実証されたら、80億円を使わなくてすむことにもなります。
そればかりか、水産資源が回復して毎年100億円の経済効果を生み出す可能性も言われています。
また干拓堤防開削についても、鳥取県が「米子・境港市の強い要望なので、この場で協議を進めて欲しい」と提案しましたが、農水省は堤防を開削しても水質・治水効果は変わらないと、かたくなな姿勢を変えませんでした。
鳥取県も頑張ってくれているので、市民・議会・行政が力を合わせてさらに農水省に対して働きかけていくことが大切です。