2002年9月議会報告

9月議会各個質問報告 9月議会は11日から30日まで開かれました。今回は課題が特に多く、本会議場での 各個質問にどれを取り上げるか悩みました。結局、住基ネット、原発、市町村合併、プー ルの紫外線対策の4つを質問。駅前サティ、環境基本条例は、議案質疑や委員会審議で取 り上げました。

住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)から離脱を

Q=個人情報保護の法整備ができていないなどの理由で、100を越える自治体議会や首 長が実施延期を求めていたにもかかわらず、8月5日に住基ネットが稼働を始めた。稼働 後も杉並区や国分寺市、横浜市などが住基ネットに参加していない。 米子市も市民の個人情報を守るために、住基ネットから離脱すべきである。市長は、個 人情報は完全に保護されると考えているのか。個人情報保護の法整備がされないままに実 施が強行されたことをどう思うか。
市長=法律で安全確保措置などを義務付け、罰則規定も強化している。技術面も厳重な通 信制御を実施している。米子市も管理規定などを定め、個人情報保護に努めている。法が 未制定の状況は必ずしも望ましい状態とはいえないので、引き続き市長会等で法整備を要 望していく。

Q=完全に漏洩を防げると保証できるのか。100%責任が取れるのか。
市長=個人の考えとしては、これで全て責任が取れるほど完全であるとは思っていない。

Q=米子市から提供した情報が安全に管理、使用されているかどうか米子市として確認で きるのか。
部長=米子市として確認するシステムはない。万全の体制が取られているということで国 、県を信じている。

Q=データ流出や不正使用など、危険性が具体的に明らかになったときには住基ネットか らの離脱も考えるのか。
市長=国の対応が納得できない場合には離脱もせねばならないと思うが、現在は法律を遵 守するつもりでいる。

東電が原発事故隠し。島根原発はだいじょうぶなのか?

Q=東京電力が10年以上にわたり原発事故隠しをしていたことが明らかになった。事故 隠しが行われていた炉心隔壁(シュラウド)のひび割れは最悪の場合は炉心溶融、もしく はチェルノブイリのような水蒸気爆発が起こる可能性があると指摘されている。 また、原子力安全・保安院が2年余りも事故隠しを公表しなかったことは、国の検査体 制も信用できないということも明らかにした。 東電の事故隠しとそれに対する国の対応、原発の信頼性について、市長の見解は?
市長=こうしたことが起こると原子力発電に対する国民の不安を募らせるとともに、国の 原子力行政への信頼を損なわせるものであり、大変遺憾に思っている。

Q=今回の事件で、原発大事故の起きる可能性があることがあらためて明かになった。原 発事故に対して、住民の安全を守るための一層の取り組みが問われている。米子市は原発 防災計画を策定することになっているが、進捗状況、および計画を策定する上での基本的 視点を尋ねる。
市長=県の計画を7月3日付けで正式に受けとった状況なので、現在内部で素案を検討中 。基本的な考え方については、県の防災計画の方針に沿った計画にする必要があると考え ている。

Q=核燃料輸送事故対策、放射能被害を想定した対策をつくるのか。
市長=輸送事故対策は今回の事態でますます懸念を持つようになった。このことについて 県に申し入れ、県と協調してつくる要綱の中に入れるように極力努める。

Q=防災計画策定過程を公開し、市民意見の反映を。
市長=一般の人にも当然メンバーに入ってもらう。

Q=原発中心のエネルギー政策を見直すことが問われている。市長の見解は?
市長=他のエネルギーを考えることは非常に大切なことだが、現在のところ、原子力に頼 らざるを得ない状況にあると理解している。ただ、原子力発電の安全神話の崩れを非常に 重く受け止めている。場合によっては、国に向かってこういう危険な原子力政策は反対で あると言わねばいけないと思うが、いま国がいろいろと調べているところなのでこの方向 を見定めたい。


原発政策見直しを求める意見書を国に提出

東京電力の事故隠しで原発の危険性が誰の目にも明かになりました。日本も脱原発政策 を進めることが問われています。そこで、以下の項目について米子市議会として国に意見 書を出すことを提案し、全会一致で決議されました。

原子力発電所の事故隠しの真相究明と再発防止、原子力政策の転換を求める意見書
 (前文略)
 このたびの事件で、国民は原子力発電に対してかってないほどの不安を抱いている。 よって、政府、関係機関においては、以下のとおり取り組ま れるよう強く要請する。
1、不正が行なわれた13基の原子炉を直ちに停止し、総点検すること。亀裂の有無の確 認だけでなく、原子炉の各部品に至るまで正確な状況を  把握するために、十分時間をか けて調査を行い、結果をすべて公表すること。
2、不正は、東京電力やゼネラル・エレクトリック・インターナショナル社に限らないと 考えられるので、他の電力会社、原子炉・機器メーカーの検査  についても徹底して調査 し、その結果を公表すること。
3、原子力安全・保安院は、コスト削減要求の中で、定期検査の簡略化を目指しているが 、このような偽造が明らかになった以上は、この方針を撤  回し、むしろ検査体制を強化す ること。
4、今後、原子力を推進する部門と規制する部門の分離を図ること。
5、国は原子力中心のエネルギー政策を転換すること。


米子市が合併を進める理由はなくなった

Q=市長は、「米子だけが生き延びていいのか、将来に不安を持つ市町村と肩を寄せあっ て生きていくことが必要」と、特有の人情論で合併を推進してきた。しかし、周辺市町村 は米子市との合併ではなく、地域の共同意識を保つことができる範囲での合併の方向に向 かっている。市長の合併推進論は論拠を失った。これ以上米子市から合併を働きかけるこ とはやめるべきではないか。
市長=単独での生き残り策や小さな単位での合併を検討される所など多々ある中で、米子 市を含む合併ということも選択肢の一つとして考えている市町村もあるので、こういった 市町村には今後も合併協議会の早期設置に向けて働きかけていく必要があると考えている 。

Q=米子市から「合併しない場合の財政推計」という資料が発表された。合併しなければ 「行政サービスについても現行水準を低下せざるを得ない」として、市民にいたずらに不 安を与えている。具体的には、どんなサービスがどれくらい低下するのか。
市長=財政面のみに着眼した事務的かつ機械的な一つの試案であり、現段階で今後の財政 運営の指針とするものではない。合理化策もマクロ的見地からの一般論であり、維持管理 経費の抑制策としての公共施設廃止、再編統合にしても具体的施設を特定したものではな い。

Q=下水道事業の見直しは、この度の財政推計の中で検討したのか。
市長=検討していない。

下水道見直しで赤字解消できる
「合併しない場合の財政推計」は、8年後から毎年11億円余の赤字に転じるから合併が必要、という論調で作られている。しかし、11億円の赤字くらい、下水道計画を見直せばいくらでも解消できる。
公共下水道は区域全体に下水管を張り巡らせるので、莫大な費用がかかる割には進展しない。米子市は35年間に約1,200億円の巨費を投じたのに、普及率は人口比で40%に過ぎない。100%にするためには、さらに6,000億円の金と60年の歳月が必 要である。 巨額の工事費の不足を補うために、一般会計から毎年約30億円を下水道特別会計に補填している。単純計算だが排水処理を合併処理浄化槽方式に切り替えれば、約300億円の金で、しかも3年間で100%普及することができる。5,700億円の倹約である。


学校プールに日除けテントを

Q=フロンガスなどによるオゾン層破壊が進み、白内障や皮膚がんなど、紫外線が人体に 及ぼす害が深刻になっている。人間は18才頃までに生涯で浴びる全紫外線量の約半分を 浴び、18才頃までに浴びた紫外線量が多いほど、皮膚がんなどの発症率が高くなるとい われている。4月から8月は年間で最も紫外線が強くなる時期であり、この時期のこども たちの日焼け対策は大人の重大な責任である。 こうした紫外線の害からこどもたちを守るために、来年度事業で学校プールに日除けテ ントなどを設置すべきと考えるが、どうか。
教育長=白人を中心に皮膚がん等が世界中で急増していることは言われている。大がかり な日除けテントの必要性については、厚生労働省や文部科学省がまだ具体的な紫外線対策 の指針を示していない段階なので、今後研究したい。

Q=山梨県、高知市などで対策が進んでいる。医者である市長として、来年度予算で財政 的配慮を。
市長=後日、教育長も交えてよく相談したい。


米子市による「駅前サティ」支援はリスクが大きい

昨年倒産した大手スーパーマイカル直営の「米子駅前サティ」存続のために、米子市が 支援を行うことになりました。支援内容は、店舗と駐車場敷地を米子市開発公社が不動産 業者から買い取り、マイカルへの賃貸料を年間1億5,100万円値下げするというもの 。
土地を米子市開発公社が購入するに当たっては、購入資金の借入を米子市が債務補償し 、もし損失補償した場合には市が土地と立体駐車場を取得するということです。
市長は、「もし米子市が損失補償する場合でも土地などが手に入るから、市に損害は生 じない」と言いますが、更地とは違います。取得したとしてもお荷物になるおそれがあり ます。仮に取得したとしてどうするのかと質問したところ、新たなスーパーなどを捜すし かないということでした。新たな入居者がない場合どうするのでしょうか。
また、マイカルの事業管財人である(株) イオンは「日吉津ジャスコ」の経営者です。 同じようなスーパーとして競合するのに、本当に駅前サティを存続させることを考えてい るのでしょうか。少なくともイオンの方針を示してもらい、それを見てから最終判断すべ きです。イオンの方針が示されないままに支援を決めるのは危険です。
さらに、「駅前サティ」の所有者である駅前開発(株) 社長森田隆朝の名前で、「店舗 コスト削減、集客効果等の上から一部行政施設導入のご希望があれば、前向きに対応させ ていただく用意がある」と提案しています。ワンフロアーを行政施設として使うことにな った場合、600坪あるので、坪1万2,000円として年間8,640万円も払わなけれ ばなりません。財政が苦しい中で、大変な額です。
様々な課題についての説明と議論が不十分なままに「駅前サティ」を支援する議案に対 して、私と八幡議員の二人が反対しました。


「米子市環境基本条例」、委員会で修正案を提出

これまでの環境行政は公害防止や自然環境保全対策が中心でした。しかし、地球温暖化 など、人間の社会経済活動全般が地球環境にまで深刻な影響をもたらす時代を迎え、個別 分野ごとの施策だけでなく環境を総合的にとらえた施策が必要になってきました。
そこで 、環境基本条例を制定して、環境の視点を行政のあらゆる施策の基本に据えようという動 きが全国の自治体に広がってきました。 私も、以前から環境基本条例の制定を提案していましたが、やっとこの9月議会に提案 されました。
しかし、条例案にはいくつか問題がありました。 全体に「努める」という表現が目立ちます。例えば「環境基本計画の策定に当たっては 市民及び事業者の意見が反映されるように努める」となっています。市民等の意見を反映 することは努力目標ではなく、必須条件でなければいけません。
また、「市は、環境の保全上の支障を防止するために必要な規制の措置を講ずるように 努めるものとする」という表現もあります。ここは、法律の規制があるもの以外でも住民の健康や生活環境、自然の恵みを破壊する恐れのあるものに対して、市に防止措置を講じ させるためのとても大切な条文です。例えば、送電線の電磁波などは法律の規制はありま せんが、住民を守るために独自の取り組みをしている自治体もあります。米子市はこのよ うな問題に大変消極的です。「努める」という表現で逃げ道を作っているとしか思えませ ん。
原案の最大の問題点は、環境アセス(影響評価)の項目がないことです。「鳥取県にあるから必要ない」というのが当局の言い分ですが、県のアセス条例の対象は大きな事業だ けです。例えば、県条例によるアセス対象事業は、廃棄物最終処分場は埋め立て面積30 ヘクタール以上、工場団地、住宅団地は100ヘクタール以上、ゴルフ場は50ヘクター ル以上となっています。それより小さい規模でも環境アセスは必要です。
将来にわたる重要な条例なので、委員会で、「努める」という表現を「講じる」という 積極的表現に替えることと「環境アセスの推進」という項目を付け加えることを、修正案 を付して提案しました。内容については共鳴してもらったのですが、とりあえずは当局案でということで、採決の結果、残念ながら5対2で修正案は否決されました。


「高速道路の整備促進に関する意見書」に反対しました

県内市町村の議会に行政側から、「高速道路の整備促進に関する意見書」を決議するよ うに要請があり、私は反対しました。たぶん、県内の議員で反対したのは私ひとりではな いかと思います。
現在行われている高速道路見直しの議論は、いわゆる小泉改革の、効率性と競争を優先 した地方切り捨てそのものであり、小泉首相のやり方には反対です。
しかし、高速道路は 計画通り整備すべきという内容には賛成できません。自動車交通をいかに減らすかという 視点が全く欠けているからです。
日本には7,500万台近くの車があふれ返っています。世界の車の数は約4億台とい われており、日本はアメリカとともに飛び抜けています。いま、地球温暖化防止のために 自動車交通をいかに減らすかが緊急課題です。ヨーロッパなどでは路面電車などの公共交 通を積極的に整備して二酸化炭素削減の取り組みをしていますが、日本は非常に対策が遅 れています。
確かに車は便利なものであり、高速道路も早く快適に走行するめには大変魅力的なもの です。だからこそ、自動車は放っておけば増え続けるのであり、自動車交通を減らすため には鉄道や電車、バスなどの公共交通に人々を誘導するための積極的施策を講ずる以外に ありません。
現在、高速道路の建設費は全国平均で1Km当り50億円です。今後未整備道路を全部 造るには、単純計算してもさらに23兆円という多額の金
が必要となります。高くつく高 速道路の建設費を、鉄道の高速化や便数増、運賃の大幅値下げなどの財源に振り向ければ 、自動車交通を減らすことは十分可能であり、高速道路がなくても人々は快適に移動する ことができるようになります。
また、高速道路が地域の発展につながるという議論も今一度検証してみる必要がありま す。「何が何でも高速道路の整備促進を」というのではなく、高速道路問題を大局的な視 点から冷静に論じることが大切ではないでしょうか。