6月議会(6月25日〜7月16日)の報告


目立った官僚応答弁−野坂新市長

12年間続いた森田市政から野坂新市政になり、なにが変わるのだろうかと期待した市民 の方も多かったと思います。野坂市長の公約は「生活充実都市・米子」実現のために、経済 活性化、少子高齢化対策、市行政の改革、広域合併の推進に取り組むというものです。

新市長が初めて臨んだ6月市議会で各会派が具体的な政策を問いましたが、野坂市長の目 玉的政策というものは最後まで示されませんでした。 職員が書いた答弁を読み、市長の個人的考えを求めても、「先ほどお答えしたとおりです」 という官僚的答弁が返ってくるだけです。染みついた外務省官僚としての体質が抜けるまで には、時間がかかりそうです。

 

会派「サンシャイン」を結成し、議会改革などを提案

「議案に対する賛否や議員の行動を拘束せず、議会としてのチェック機能を果たすととも に開かれた議会・市政を目指す」ということを共通確認に、八幡・矢倉議員と3人で会派「サ ンシャイン」を結成しました。議会運営会などに正式に参加できる3人以上の会派は、保守が合同した「しんせい」(10 人)、新人議員7人が入った「新風」(10人)、公明党(4人)、共産党(3人)、サンシャイ ン(3人)の5つになりました。

「サンシャイン」として最初に取り組んだのが、正副議長選挙での立候補・所信表明制 度の提案です。 5月20日の臨時議会前日までに立候補届をした候補者の中から選ぶという ことは全会派合意しましたが、所信表明演説については共産党以外が反対しました。後で分 かったのですが、「しんせい」と「新風」で正副議長を分け合うという裏取引ができていた ので、所信表明に反対したようです。新人議員がこれにくみしたことは残念でした。  

「サンシャイン」は、代表質問制度の見直し、各個質問時間制限の10分延長、議案質疑 の回数制限撤廃、請願、陳情者への説明機会の提供などの議会改革とともに、議会主催のシ ンポジウムや市民団体との懇談会の開催、議員提案能力の向上のための政策学習会の開催、 政治倫理条例の制定、 議長交際費の完全公開など、議会活性化についても提案しています。

 

各個質問より

3人以上会派なので代表質問権がありますが、市政全般について質問しても5番目ともなると 同じ答弁しか返ってきません。サンシャインは代表質問を行わず、個々人で質問することにしまし た。私は4つの課題について取り上げました。

1,市民参加の市政推進

市長は施政方針演説の一番目に、「市政の主役は市民」「市民との協働」をあげました。し かし、中身がなければ単なるスローガンに終わってしまいます。私は、「協働」という言葉 の意味は、市の施策や計画の策定に当たって早い段階から市民参加を促進することはもちろ んですが、これまでのように行政だけが公共サービスを行うのではなく、市民団体・ボラン ティア団体・NPO等と行政が協力し、多様な公共サービスを提供するという積極的な意味 を含んでいると考えています。

市長の考える「協働」の中身を尋ねましたが、具体的なイメージは聞けませんでした。

また、職員の意識を変え、「市民との協働」を具体化するために、(仮称)「市民活動推進 条例」の制定と、市民との協働を推進する部署の設置を提案しました。条例については必要性を今後検討したい、部署の強化は検討したい、との答弁でした。   

2,公正、公平な行政執行

まず、「天下り」問題について質問しました。

現在、完全失業者は380万人と言われる厳しい雇用情勢です。そういう中で、市退職職 員の外郭団体等への「天下り」は許せませんし、補助金や委託金交付団体に退職職員が天下 ることは、公正な市政運営上からも問題です。現在、社会福祉協議会も含めて12の外郭団 体に、市の退職職員が23人、退職教員が6人、事務局長や館長などのポストで再就職して います。

このたびの選挙でも、「天下り」をやめさせて欲しいという声が多く聞かれました。市長 に断固たる取り組みを求めました。 「外郭団体は市との連携が必要。外郭団体職員が育ったところから再就職をやめる」とい う前市長と同じ答弁で、がっかりしました。

次に、外郭団体の統廃合について質問しました。

現在、12の外郭団体に合計で483人の職員がいます。一番の問題として言われているの が、異動がなく、仕事内容が委託事業中心なのでマンネリ化し、いきいきと仕事をしていな いと言うことです。これまでも外郭団体の統廃合が常に課題に挙がっていますが、一向に進 展していません。

市長に見解を尋ねました。 「自分も調べたが、必ずしも検討が進んでいない。団体毎の業務を整理し、統廃合を検討 したい」との答弁でした。

3,中海の環境回復策

(財)中海宍道湖汽水湖研究所が、干拓堤防を開削しただけでは海水が回らないために水 質はあまり改善されないが、中浦水門を利用して昔のような地形を作れば水質がよくなると いうシミュレーションを発表しています。

米子市議会は、水門を使ってこれを検証してくだ さいという陳情を全会一致で採択しています。 しかし、6月17日、市長は議会に相談せずに、「中浦水門を他用途利用する考えがない」 と県に回答しました。このままでは、農水省は水門を撤去してしまいます。

市長は、議会のこれまでの意向をふまえて回答したと言っていますが、中海問題について の認識が不十分であるためにこのような過ちを犯したことを指摘し、これからは議会と相談 すること、勉強会などにできるだけ参加して認識を深めること、改めて県に担当者を派遣し てこれまでの米子市の考え方を正確に説明することを求めました。

市長は、今後そのようにすると約束しました。

4,性同一性障害者の人権保護

「性同一性障害」とは、生まれながらの自分の体の性に強い違和感を持ち、別の性になり たいと悩む障害のことで、原因としては、生まれる前のホルモンの異常などが疑われていま す。

性同一性障害の患者数は、おおよそ男性で3万人に一人、女性で10万人に一人と推定 されています。 重くなると、体の性別を心の性別にあわせる手術をしないと精神的にもやっていけなくな るといわれ、日本でも5年前に医学的に性転換手術が認められるようになってから手術を受 ける人が増えています。

 しかし、体の性別が変わっても戸籍の性別変更が認められないために、さまざまな差別や 偏見による人権侵害が生じています。例えば、●役所の窓口で書類を請求した時に、代理人 請求書類を要求されたり、本人確認の身分証の提示を求められた。釈明すると職員に差別の 目で見られ、嘲笑された。●契約や商取引の際に印鑑証明が求められるが、記載してある性 別と外見が違うために仕事に支障を来した。など、数多くの事例があげられています。

 戸籍の性別変更を認めていないのは、先進七カ国では日本だけであり、性同一性障害者が 差別や偏見にさらされている現状は、人権問題として見過ごしにできない問題です。 国において、すべての性同一性障害者の性別変更を認める法整備をすることが重要ですが、 自治体においても、性同一性障害者の人権保護のために、印鑑登録証明書などへの不要な性 別記載を見直すことが問われています。

この問題については、昨年から担当課に提起していましたが、改めて本会議で取り上げ、 米子市でも人権保護の観点から行政文書の性別記載を見直すこと、職員研修会などを行いこ の問題に対する正しい認識をもって市の施策の推進や市民啓発などを進めること、を求めま した。

性別記載欄削除が可能なものは一ヶ月後から実施する、職員研修会も実施するとの答弁が あり、その後、9月1日から97文書の性別記載をやめることが決まり、8月8日には当事 者の方を講師に職員対象の講演会が開催されました。

 

補正予算などに反対しました

6月議会は野坂新市長が政策予算を提案する初めての議会です。しかし、私は以下の理由 で、予算案や住基カードの手数料条例などに反対しました。

@住基ネット第2次稼働に向けた住基カード発行経費が含まれている。カードは将来、さま ざまな機能を盛り込んでいろいろな分野に利用されようとしており、一層個人情報が危険に さらされることは明らかである。米子市が責任を持って市民の個人情報を保護できると言え ない以上、住基ネットへの参加は見直すべきである。

A幼児歯科対策事業として、1歳6ヶ月児健康診査の際に希望者にフッ素塗布を行う予算が 含まれている。フッ素洗口やフッ素塗布による健康障害として、嘔吐や倦怠感などの急性毒 性、口腔がんの発生、血中カルシウム低下による骨折、ダウン症児出生率の増加などが指摘 されている。世界保健機構でも「フッ素洗口は、6歳以下の小児にはやってはいけない」と いうことを指針にしている。危険性が指摘されているものについては最大限慎重であるべき というのが、安全性に対する考えでなければいけない。

B米子城址への自動昇降装置設置による経済波及効果や費用対効果を調べるための予算が 含まれている。城山は、鳥取県指定の準絶滅危惧種の植物や、多くの希少種のシダ類も存在 している。また、多くの爬虫類や昆虫類も生息しており、鳥取県指定の準絶滅危惧種のセミ や希少種のガなどもいる。さらに、環境庁指定絶滅危惧種のハヤブサなどの鳥類も、約70 種類観察されている。自動昇降機設置の経済効果を調べるより、城山の貴重な自然を調査し、 その保護策と自然環境教育などへの活用方法を検討する方が重要である。

C中学校昼食対策検討予算が計上されているが、市長の中学校給食実施の意志が曖昧な中で の暫定昼食対策は、給食の長期先送りにつながるおそれがある。

 

皆生温泉にカジノ構想

崎津のウインズに続いて皆生温泉に「カジノ」を作るという話が持ち上がってきました。

スロットマシンやルーレットで全国から客を呼べば皆生温泉の活性化にも役立つとして、温 泉組合なども積極的だということです。 勝ったコインは商品券と交換する予定ですが、法律で禁止されています。また、ゲームの 商品も1万円までにするということですが、現在の法律では800円までしか認められていま せん。

そこで、構造改革特区の手続きを進めるということです。 構造改革特区は政府が進める規制緩和の目玉で、内容によっては特定の地域で法律の規制 をはずすという制度です。まず申請案を政府に提出し、OKということになれば申請できま す。最初の提案は行政だけでなく、企業も含めて誰でもできますが、認可の正式申請ができ るのは自治体だけです。 

6月議会で数人の議員がこの問題を取り上げましたが、野坂市長は「国の(提案)審査後 に、市に(業者から)申請があれば検討したい」として、皆生温泉に「カジノ」をつくるこ とに対して、最後まで自分の見解は述べませんでした。

皆生温泉はいまでもソープランドが多く、家族客などに評判が良くありません。この上に 「カジノ」ができれば、悪評が全国に広まり、ますます寂れてしまうでしょう。暖かいサー ビスや料理を提供し、徐々にお客さんが増えるような地道な努力こそが求められています。

不景気になるとすぐギャンブルが浮上してきますが、大人の刹那的生き方が子どもたちに 悪影響を及ぼしていることを考えなければいけません。この問題は9月議会の中心テーマに なりそうです。