『複眼』:中川健作の日頃の想い
 
犯罪的な、福島の「帰還基準」 (市政研ニュースNo.363号:2014年3月24日号 より)

原子力規制委員会が、福島第一原子力発電所事故で避難している住民の帰還に関し、1年間に被曝する放射線量が20㍉シーベルト以下であれば健康上に大きな問題はないとする指針をまとめました。
 チェルノブイリ原発事故後25年間、ウクライナ政府は住民の健康調査を続け、236万人もの被災者のデータをもとに2011年4月にその結果を発表しました。「ウクライナ政府報告書」と呼ばれるもので、低線量被曝の深刻な健康被害の実態が明らかにされています。二つほど紹介します。
 まず、「甲状腺がん患者数の推移」です。事故前は、ウクライナの子どもの人口1200 万人に対して年間4~5例の発症でしたが、事故の年には19例、1990年から大幅に増え続け、2008年には600症例、2011年には700症例に達したとのことです。また、被曝した親から生まれた子どもの内、慢性疾患を持つ子どもの割合は1992年の21.1%から、2008年には78.2%へと大幅に増加しています。
 ウクライナ政府は事故から5年後に「チェルノブイリ法」と呼ばれる法律を定め、住民の被曝が年間5㍉シーベルトを超えると想定される地域は強制的に移住させ、年間1㍉シーベルトを超えると想定される地域は希望者は移住させ、住民の被曝を低減する対策を取りました。それでも、深刻な健康被害が出ているのです。年間20㍉シーベルトという帰還基準がいかに犯罪的な、とんでもないものであるか、明白です。チェルノブイリの教訓に学ぶべきです。
 「ウクライナ政府報告書」の内容は、NHK出版から発行されている『低線量汚染地域からの報告~チェルノブイリ26年後の健康被害』(1400円+税)にわかりやすくまとめられています。現地取材を踏まえた、読み応えのある本です。多くの方に読んでいただきたいと思います。(中川健作)

無責任体制ですすめられる島根原発再稼働
         (市政研ニュースNo.362号:2013年12月17日号 より)

 11月21日、中国電力は島根原発2号機の新規制基準適合審査申請の事前了解を、立地自治体の島根県と松江市に申し入れました。いよいよ島根原発再稼働に向けて動き始めました。鳥取県、米子市、境港市も申請に対して是非の意見を言うことができることになっており、米子市議会でもこのことに関して議論を始めました。  最初に、基準を策定した原子力規制庁から説明を受けました。―「住民避難計画作成は自治体の仕事である」、「ベントのためのフィルタの性能は申請を見ないと何とも言えない」、「規制庁は安全審査をするだけで、再稼働判断はしない」、「使用済み核燃料対策は議論していない」。  次に、中電から説明を受けました。―「避難計画は自治体がやること」、「フィルタの性能は企業秘密」、「再稼働は事前了解事項ではない。 今後国が再稼働の手続きを決めるだろう」、「使用済み核燃料の処理は国が検討している」。  次に、12月議会一般質問で市長に質問しました。―「避難計画は国の考え方に従って作った。独自に放射能拡散シミュレーションをやる考えはない。避難計画は完璧ではない」、「原発の安全対策は国の基準を踏まえて中電が対応するであろう」、「再稼働にあたって米子市の意見は立地自治体と同様に聞いてもらえると思う」。 国(規制庁)も中電も住民避難計画に責任を持たない。米子市は完璧な避難計画を主体的につくる気はない。ベントでどれだけの放射能が撒き散らされるのかも明らかにしない。再稼働の判断はどこが行うのか、米子市に同意・不同意の権限があるのか等も全く不透明。使用済み核燃料の処分は先送り。  福島原発事故を起しても、原発無責任体制は何も変わっていません。住民の安全に誰も責任を持たない中で、再稼働なんてとんでもない話です。

私のガン克服宣言(市政研ニュースNo.360号:2013年5月30日号 より)

遂に癌になりました。経過は次のとおりです。
 3月5日に腹部が急に痛くなり盲腸だと思って病院で検査してもらったところ、癌が大腸を塞いだことによる痛みだとわかりました。直ちに入院して手術をしましたが他の臓器にも転移していることと、場所的に他の臓器に負担を与える手術になるということがわかったので、癌が塞いだ箇所にバイパスをつくっただけで、癌の摘出はせずに開腹部を閉じました。最重度の大腸癌であり抗癌剤を投与し続けるしか治療方法はないと医師から告げられたときは、正直、「死」という文字が頭の中を巡りました。「癌患者は癌で死ぬのではなく抗癌剤で殺されている」と言われますが、抗癌剤は免疫力を著しく低下させて体力を失わせ、最後には命を奪うと聞いていたからです。
 しかし、一方では、医師から余命数ヶ月と宣告されながら10年以上も元気で生活している方もいます。今や二人に一人は癌になる時代と言われるとおり、多くの方々が癌になり、様々な方法で癌と闘っています。癌に負けない方たちに共通しているのは、抗癌剤に頼るのではなく自己の免疫力を高めて癌細胞を抑えているということです。
 悪い食べ物、ストレス、運動不足などがガンになる主な要因だと言われていますが、私が癌になった主原因はストレス、運動不足だろうと反省しています。目の前の仕事、活動に追われ、健康のことや本当に大切なことを余り考えてきませんでした。従って、私の場合、自己の免疫力を高めて癌細胞を抑えるためには、これまでの生活と生きる姿勢を根本的に見直し、心と体のリズムを良好に保つような生き方に変えることが必要です。
 国立がん研究センターの本によると、私のような症状では5年生存率(癌の診断から5年経って生存している人の割合)は13%とのことです。しかし、これは抗癌剤治療などの現代医学を前提にしたものです。ビワの葉温熱療法や有効なサプリメントの摂取など代替療法も活用しながら前向きに「新しい人生」を生き、自己免疫力を高めて、聞くも忌まわしい「13%生存率」を粉砕するぞ!
 以上、人生の再出発に当たっての決意表明でした。

原発事故被曝者を遺棄する政府(市政研ニュースNo.359号:2012年12月10日号 より)
 伯耆町の農家の方たちが「東北を支援する会」をつくり、原発事故の被災地に安全なお米を届ける活動を行っています。私もお手伝いしていますが、届け先のひとつである福島県郡山市の方から先日いただいたお便り(抜粋)を紹介します。福島県の人々の苦しみ、怒りを一日たりとも忘れてはいけないと肝に銘じています。(中川健作)
--ここから引用---------
国の除染の基準となる0.23μSV/時を、福島市・郡山市のほとんどの住宅内で今だに超えています。我が家も例外ではありません。我が家の前の駐車場では、18歳未満立ち入り禁止となる「放射線管理区域」の0.6μSV/時を超えています。子供たちを安心して学校に通わせることができるように、安全に暮らしていけるようにと、市民が被曝のリスクを背負いながら除染活動をしています。しかしながら、半減期の長い放射能はすぐになくなることはありません。移動するだけです。まさしく移染です。雨が降れば、風が吹けば、台風がくれば、また戻ってきます。
「直ちに影響がない」と言われ続けて一年以上経ちました。子供が体調を崩して県内の病院へ行った人のお話です。放射能の影響を心配していると、①「放射能の影響ではありません」とはっきりと明言され、②「そのように心配することで、ストレスの方がかえってよくありません」、③「母子避難をする人もいますが、家族がバラバラになることで子供の健全な発育によくありません」、この三つの言葉の順序で、説明されたと聞いています。この三つの言葉の説明は、実はパターン化されていて、県内の新聞の御用学者のコラムなどでもよく見かけますし、福島市の広報誌でも載せられている言葉です。低線量被曝問題は、未知の世界のはずなのに、どうしてはっきりと「影響がない」と言えるのか、不思議です。
布団も洗濯物も、震災以降一度も外に干していませんが、残念ながら、まだ安心して外に干せそうにありません。これからも、防げる内部被曝(食べ物や呼吸からの被曝)は、できるだけ防ぐつもりです。様々に福島支援して下さる方に感謝をして、過ごしていきたいと思います。今の日本のまま、どこかで同じような原発事故が起こってしまったら、おそらく今の福島と同じこと、「人の命(被曝)よりも経済を優先させること」が行われることでしょう。もう、このような思いは私たちだけで十分です。ただ、ただ、安全な空気を吸って暮らしたい、願いはそれだけです。
人は、土を離れて生きてはいけません。人は、自然と離れて生きてはいけません。自然と共生できない科学技術はいりません。自然と共生できない原発はいりません。自然との共生を第一に考えた科学技術こそが、今私たちが進むべき道であると感じています。
--ここまで引用---------
原発事故被曝者を遺棄する政府(市政研ニュースNo.358号:2012年9月28日号 より)
 8月25日に福島県双葉町の井戸川克隆町長の講演を聞く機会がありました。双葉町は福島第一原発が立地する町で7,000人の町民が今も避難しています。双葉町は、なるべく放射能から遠くに避難すべきという井戸川町長の考えによって双葉郡8町村の中で唯一、町役場を福島県外(埼玉県)に置いています。町民の約半数も県外に避難しています。
  講演で町長は、チェルノブイリでは20㍉シーベルト以上は強制避難ゾーン、5㍉シーベルト以上は移住の義務ゾーン、1㍉シーベルト以上は移住の権利ゾーンだが、福島は20㍉シーベルトでも住まわせていると政府のやり方を痛烈に批判。「放射能はニコニコ笑っていれば怖くない」、「広島も長崎もチェルノブイリも内部被曝はない」などと御用学者が講演して回り、放射能について語れなくなっている福島の現状を憂いておられました。
  そのような井戸川町長ですが、汚染土壌の中間貯蔵施設を双葉郡に設置したいとの政府の発表に対して、「さらに町に住めなくなるような施設の設置は認めない」と発言したことが報道されました。その発言に対してツイッターなどで、「汚染した土地に住民を帰す気か!」「金目当てか!」などの批判が飛び交っています。私も井戸川町長の発言を疑問に思っていたので、講演後の質疑で真っ先に質問しました。
  --3~5年後くらいに被曝の影響(老化、心臓病、糖尿病など)が出てくるだろう。これ以上被曝をさせたくないので、1㍉シーベルト以上は避難をと言っている。町長として立場上公式に言えないが、元の町には『住めない』と考えている。地球上から双葉町をなくしたくないのでどこかに新たに町を作りたいが、国が法律を作らないとできない。国にそのことを要望しているが、全く考えてくれない。放射能で住めなくして、さらに放射能を持ってくることしか考えていない。だから、中間貯蔵施設に反対している。--
  「老人から『町長、俺の死に場所を早くつくってくれ』と言われるのが辛い」、「政府は双葉郡7万人の被曝者を放棄し、抹殺するのか」という町長の“血の叫び”が、1年半経つフクシマの実態であることを思い知らされました。
原発安全神話とマスコミ神話市政研ニュースNo.357号:2012年6月12日号 より)
 4月13日に「がれき焼却は安全か?」と題して、池田こみちさん(環境総合研究所副所長)の講演会を開催しました。講演を通してがれきの広域処理の問題点を知ることができましたが、以下の話も大変印象に残りました。
  「世界各国(国民)の制度・組織への信頼度」(電通総研・日本リサーチセンター編『世界50ヶ国価値観データブック』)によると、新聞・雑誌への信頼度では、トップは日本で70%の国民が信頼しています。ドイツ36%、フランス35%、イタリア34%、アメリカ26%、イギリス14%で、先進国と言われる国々の中で日本の比率が異様に高いことに驚きました。また、政府はがれき広域処理キャンペーンのために2011年度に9億円、2012年度に15億円を新聞広告などにつぎ込んでいるそうです。その結果、全国紙、地方紙問わず、「『お互いさま』の精神で広く受け入れよう」など、社説で政府の思惑通りの主張を展開しています。
  米子市長のがれき受け入れ表明に対して、評価する投書が地元紙に多く寄せられています。私に対しては「何故反対するのか」という詰問調の問い合わせが少なからずあります。直接話せば理解してもらえるのですが、マスコミ報道がいかに間違った世論を形成するのか、本当に怖さを実感します。そういえば、4月13日の講演会に新聞社も何社か取材に来ていましたが、私の知る限り、講演会のことを報道した新聞はありませんでした。記者は記事を書いたと思いますが、上の方で何かの力が働いたのでしょうか。
  福島原発事故を起こした責任は東京電力と政府にありますが、原発の問題点を報道してこなかったマスコミの責任も大きいと思います。電力業界から多額の広告料収入をもらい、クリーンな電気であるとか、発電単価が安いとか、日本では過酷事故は起きないとか、一方的な報道を繰り広げてきました。しかし、がれき広域処理を巡る報道を見ると、マスコミの体質が全く変わってないことに愕然とします。そして、大飯原発再稼働についても、政府の方針を批判している気骨のあるマスコミはありません。
  私たちは、原発安全神話から決別しなければならないことを福島原発事故で学びましたが、マスコミが事実を報道しているという神話からも決別しなければなりません
原発は核抑止力のために必要という石破茂議員(市政研ニュースNo.356号:2012年3月26日号 より)
 鳥取県選出の石破茂衆議院議員が「軍事オタク」であることは有名な話です。数年前、米子市議会で中海の堤防開削を求めて国会議員に陳情に回った時、私は分担で石破議員の控室を訪問しました。本人は留守でしたが、聞いていた通り、その控室の書棚には戦闘機、戦艦などのプラモデルが多数陳列してありました。石破議員が防衛大臣になった時には、戦争好きが本当の戦争をしたくなるのではないかと、危惧しました。
  この石破議員が自民党の政調会長になったり、総理大臣にしたい政治家に選ばれたり、とんでもないことだと不愉快に思っていたのですが、3.11福島原発事故後に、彼は「核抑止力のためにも原発はやめるべきではない」と、許されざる発言を繰り返しています。 
  その中から、小学館の雑誌「サピオ」(2011年10月5日号)での発言を紹介します。
―「核の潜在的抑止力」を維持するために私は原発を止めるべきとは思いません。私は核兵器を持つべきだとは思っていませんが、原発を維持するということは、核兵器を作ろうと思えば一定期間のうちに作れるという「核の潜在的抑止力」になっていると思っています。逆に言えば、原発をなくすということはその潜在的抑止力をも放棄することになる、という点を問いたい。・・・
  私は日本の原発が世界に果たすべき役割からも、核の潜在的抑止力を持ち続けるためにも、原発を止めるべきとは思いません。・・・
  核の基礎研究から始めれば、実際に核を持つまで5年や10年かかる。しかし、原発の技術があることで、数ヶ月から1年といった比較的短期間で核をもちうる。加えて我が国は世界有数のロケット技術を持っている。この二つを組み合わせれば、かなり短い期間で効果的な核保有を現実化できる。・・・」―
  今後何十年も放射能の影響に怯えながら暮らさなければならない福島の子どもたち、放射能汚染によって故郷を捨てなければならない人々の悲しみと憤りを、石破議員は何と思っているのだろうか。原発を推進してきた者として、まず謝罪すべきではないか。石破議員のひどい発言を多くの県民に知らせ、次回選挙では必ず落選させましょう!(中川健作)
 
子ども達に被曝を強いる日本(市政研ニュースNo.354号:2011年8月30日号 より)
 前号に続いて福島原発問題ですが、今回は子どもの被曝について取り上げます。
  琉球大名誉教授の矢ケ崎克馬先生によると、「チェルノブイリ周辺では、子どもの甲状腺がんが6年後から急増し、10年後には100人中15人にガンが発症。汚染状況は、25年経ってようやく7割くらいに軽減された程度である」とのことです。福島原発事故に対する日本の避難基準は20ミリシーベルトですが、チェルノブイリ事故時の旧ソ連の避難基準は5ミリシーベルトでした。日本では4倍もの被曝を子どもにも強いており、将来、子どもたちに大変な影響が出ることが予想されます。
  文部科学省は20ミリシーベルトには食物や土ホコリなどによる内部被曝などは含まれてないと言っています。 日本の飲み物や食べ物に対する暫定基準値は大変緩く、飲み物ではWHO基準値1ベクレル/リットルに対して、乳児でも100ベクレル/リットルです。野菜(セシウム)はWHO基準値10ベクレル/㎏に対して、500ベクレル/㎏です。
  ドイツ放射線防護協会によれば、このように緩い日本の暫定基準ぎりぎりパスの食品を1年間せっせと食べると、その内部被曝量は、0~17歳では58ミリシーベルトから83ミリシーベルトになるとのことです。従って、仮に環境からの外部被曝量が10ミリシーベルトとしても、68ミリシーベルトから93ミリシーベルトの被曝をすることになります。80ミリシーベルト/年の被曝(内外合計)をすると、子供は10万人当たり毎年4000人余計に死ぬと言っている研究もあるとのことです。米子市に置き換えてみると、0~18歳が約2万8千人なので、将来を担う子どもたちが毎年約1100人も放射能により亡くなることになります。
  数字ばかり並べましたが、福島の子どもたちを一刻も早く県外に疎開させないと大変なことになることは、わかっていただけたのではないかと思います。東電や政府の補償金逃れのために、子どもたちに被曝を強いることは絶対に許せません。福島の親たちと連帯し、子どもたちの被曝量を下げるよう政府に求めましょう。そして、子どもたちの未来を考え、原発建設を許してきた私たち大人の責任は大変重いものであることを肝に銘じ、すべての原発を止めるためにひとりひとりが本気で取り組もうではありませんか。(中川健作)
※「さよなら島根原発ネットワーク」が誕生しました。脱原発の輪を広げるために、参加を呼びかけます。問い合わせは市政研まで。(7月5日記: 中川健作)
 
福島原発事故と株主責任(市政研ニュースNo.353号:2011年5月16日号 より)
 3月11日に発生した東日本大震災による大津波は死者15,112名、行方不明者9,066名(5月18日現在)という悲惨な被害を生じさせました。全てを流され、思い出の写真一枚手元に残らなかった被災者の喪失感はどんなに深いものだろうと、2ヶ月経った現在も胸が締め付けられる思いで日々ニュースを見ています。
  その上に、福島原発大事故のこれからのことを考えると絶望的な気分にさえなります。原発周辺は今後広範囲にわたって居住が不可能と思われます。この原稿を書いている瞬間にも、東京都内で放射性セシウムが高い濃度で土壌から検出されたという報道がされています。半減期が30年なので、東京でも今後100年以上放射能汚染に晒され続けることになります。福島原発事故による放射能汚染は食品などを通してこれからもっともっと広がるでしょう。全国どこに住んでいても安全ではありません。
  100万kWの原発を1年間運転すると、広島に落とされた原爆の1千発分の死の灰が炉内に貯まります。(ちなみに、島根原発1・2号機は合計で128万kW、建設中の3号機は135万kW)。日本のような地震国に原発をつくれば地震災害と原発災害が重なって破局的な被害が生じることは、良心的な学者によって警告されてきたことです。それを、「5重に閉じ込めているから仮に事故が起きても放射能が環境中に出ることは絶対にない」と言って原発を推し進めてきたのが、電力会社、国、政治家、御用学者、裁判所、マスコミ等です。その責任は重大で、絶対に許されません。
  数兆円ともいわれる事故の補償をどうするのかについて議論されていますが、私はまずは東電の株主に責任を取らせるべきだと思います。昨年3月時点で東京電力の総資産は約13兆2千億円、株主資本金は約2兆5千億円です。土壌や海への汚染の広がりを考えると補償額はどこまで膨れるのか想像できませんが、これを全額使えば、とりあえずの補償は可能です。
  10数年前から、原発政策の見直しを求める市民が各電力会社の一株株主になり、毎年の株主総会で原発からの撤退を提案してきました。株主は会社の経営方針を決める権限がありますが、銀行や企業などの大株主はそれを否決して原発からの利益を享受してきました。株主の責任は明白です。また、原発事故の責任を厳しく問われることになれば、各電力会社の株主も考え直すことでしょう。
  「原発も電気もなくていいから、家族やふるさとを返して欲しい」という福島原発事故被災者の切実な訴えは、ひょっとしたら明日の私たちの叫びになるかもわかりません。今こそ、この訴えをわがこととして受けとめ、一日も早く全ての原発をとめるために頑張りましょう。(中川健作)
 
地域の崩壊をもたらすTPP(市政研ニュースNo.352号:2011年3月22日号 より)
 昨年暮、あるメーリングリストに山形の百姓の方からの切実な投稿がありました。「米、この絶望的価格」と題したメールの内容は次のようなものです。 
  ― 今年の生産者の売り渡し価格は1俵(玄米60kg)あたり9,000円、1972年の米価が一俵9,030円だったから40年前の価格に戻ったことになる。ちなみに40年前の朝日新聞の一ヶ月の購読料は900円。それが今日では3,925円となっている。およそ4.36倍だ。新聞がほぼ毎日のように書いてきた「日本の米は高い」。新聞にそんなこといえるか?今日、一ヶ月の新聞購読料が900円でやれますか?お前たちもそれをやってみたら、農家の気持ちがわかるだろう。東北農政局の発表したお米一俵あたりの生産原価は昨年産(H21)で14,617円。それを9,000円で農協に売り渡たす。水田とともに、数千年の歴史を刻んできた村はいま、少しづつ崩壊に向かっている。後継者なんて育つわけがない。大規模経営の農家の方が立ち行かない。おそらく後3年ほどこの価格が続けば、都会に大きなスラムが生まれていくだろう。この先の食と農、この国のかたちはいったいどうなっていくのだろう。―
  こんな中、菅首相はTPP(環太平洋経済連携協定)への参加を進めようとしています。TPPには現在アメリカ、オーストラリアを含む9カ国が参加し、今年11月に協定の妥結をめざしていますが、TPPの原則は、全ての品物の関税を撤廃して自由な競争原理にゆだねるというものです。財界は、自動車や家電製品の国際競争力の低下を挽回して経済を成長させるチャンスとしてTPPを推進していますが、一方で、農水省は、大量に安い農産物が輸入されるために食料自給率が14%に低下し、雇用が340万人減り、11兆6千億円の損失になるという試算を発表しています。
  中国の富裕層向けに付加価値の高い農産物を輸出すれば、農業も国際競争が可能であるという意見もありますが、農業を金の尺度だけで論じるのは間違いです。食は生きることの基本であり、自国の食料を自国でまかなうことは国家の最低限の義務です。また、人々が営々と続けてきた農業が「効率が悪いから」という理由で切り捨てられると、地域社会が崩壊します。中山間地域に人がいなくなり、頑張って維持してきた田畑が荒れ、国土が荒廃します。金儲けだけを考える人たちには、お構いなしということなのでしょうか。生きるために欠かせないものを犠牲にしてきた経済成長路線と決別し、つづまやかでも、安心してこころ豊かに暮らせる社会にしたいものです。(中川健作)
 
チェルノブイリ原発事故から24年(市政研ニュースNo.351号:2010年12月24日号 より)
 今年の夏まで、我が家では生ゴミをダンボールコンポストで処理していました。段ボール箱を二重にして「モミ殻くん炭」と「ピートモス」を混ぜ入れ、そこに毎日生ゴミを投入します。水切りを気にすることもなく、悪臭も発生せず、家の中でも生ゴミが処理できるという、優れものでした。発酵したらそのまま、猫の額ほどの家庭菜園の堆肥として使っていました。ところが、「ピートモス」が原因と思われる放射能汚染のことを知ってから、ダンボールコンポストでの肥料作りをやめました。
 東京都小金井市では、チェルノブイリ原発事故をきっかけとした市民の取り組みで、市に放射能測定器を購入させ、食品に含まれる放射能を測定し続けています。市民が「放射能測定器運営連絡協議会」をつくり、その測定を担っているとのことです。年間80件ほどの食材の測定をし、その中のベルギー産ブルーベリーコンポートから高い値の放射能(セシウム137)が検出されました。ブルーベリー製品24検体を測定した結果、内12検体からセシウムが検出され、ブルーベリー製品以外の50数検体からは検出されなかったとのことです。
  ブルーベリーは酸性の土壌を好み、栽培にはピートモスなどを土に入れて調整します。ピートモスはミズゴケ、アシ、スゲなどの植物が堆積し、長い時間のうちに泥炭化したもので、北欧、ロシア、北米、中国などの寒冷な地域に分布し、園芸資材として広く使われています。主にミズゴケからなる北欧のピートモスが採れる地域は、チェルノブイリ事故の際に最も深刻な汚染に見舞われた地域でもあります。ヨーロッパのブルーベリー製品から検出されるセシウムは、ここから運ばれた可能性が高いと思われます。
  セシウムの半減期(放射能が半分になる期間)は30年ですから、30年後に2分の一、60年後に4分の一に減るだけで、なくなるまでには相当の年月がかかります。チェルノブイリ事故から24年経ちますが、まだまだ汚染は続きます。食品の放射能汚染の恐怖を実感させられました。原発推進は、生きることの基本を否定する、全く誤った政策です。
尖閣列島は日本の領土?(市政研ニュースNo.350号:2010年11月11日号 より)
 9月に尖閣諸島(中国名:釣魚島)で発生した中国漁船衝突事件での船長釈放に対して、マスコミは「中国の不当な要求に対する屈服」、「弱腰外交」と書きたてています。一方の中国では、日本が領土を侵しているとして反日デモが頻発し、このままエスカレートすれば武力衝突にまで突き進むのではないかという危うさを感じます。
  政府やマスコミは、1895年の閣議決定で日本領に編入するまで尖閣列島は「無主の地」であり、領有する意思を最初に表示すればその国の領土になる(「先占」)という国際法を根拠に、尖閣列島は日本の領土であると言っています。
  実は、尖閣列島の領有権は1970年頃にも大きな問題になりました。同島付近に大規模な油田があると発表されてから、日・台・中の間で領土問題が起こり、1972年の沖縄返還の時にも同島の帰属が問題になりました。当時の政府も、日本の領土であることは歴史的事実であると主張しました。しかし、私がその時に読んだ井上清著「尖閣列島-釣魚諸島の史的解明」は、日本の主張の根拠を覆す衝撃的な内容が書いてあり、その記憶は今でも鮮明です。
  主な内容を引用します。
●16世紀中頃の複数の中国の記録で、中国領であったことが確認できる。
●17世紀に琉球王朝の官僚が書いた記録にも、「久米島が中国と琉球との境界」と記述してある。
●明治以前の日本の文献で、釣魚諸島が記載されているのは林子平の『三国通覧図説』のみで、その中では釣魚諸島を中国領と色分けしている。
●日本領土への編入は日清戦争に勝利した1895年であり、台湾と朝鮮半島への侵略、領土拡張の一環として行われた。
●「無主地先占」の国際法は、列強がアジア、アフリカ、太平洋の島々を植民地化するために作ったものである。
  尖閣列島付近は、もともと琉球や台湾、中国の漁民がそれぞれ漁をしていた場所だということです。領土として争うのではなく、それぞれの国の人々が安心して漁ができるような環境を作るために、知恵を出し合うべきでしょう。 (中川健作)
韓国哨戒艦沈没事件の真相は?(市政研ニュースNo.349号:2010年9月13日号 より)
 今年3月26日、南北朝鮮の海上境界付近で韓国の哨戒艦「天安」が沈没する事件が起きました。北朝鮮による魚雷攻撃であるとの報道と、ちぎれた船体の映像を何度も目にしましたが、その後どうなったのでしょうか。
  『週間金曜日』(7月16日)によると、韓国軍と民間専門家の合同調査団が北朝鮮の魚雷が沈没原因と発表した直後の5月25日に、市民団体『参与連帯』が八つの疑問点を発表しました。切断面に爆発を示す大きな損傷がない、爆発の瞬間を記録した監視カメラの映像がない、などの疑問点を列挙しています。それに対して、ソウル地検が国家保安法違反(北朝鮮への利敵行為)などで捜査に着手し、圧力をかけているというのです。
  また、『日刊ゲンダイ』(5月12日)によると、米軍の原子力潜水艦と衝突した疑惑があるとのことです。きっかけは、4月7日に日本のNHKにあたる韓国のKBSテレビが、「天安」が沈没した場所に近い海域で、米軍ヘリコプターが米兵の遺体を運び去る映像などを流し、また、海底を捜索した韓国軍の潜水特殊部隊の隊員の声として、「“天安”とは別のものが沈んでいた。潜水艦らしい」という話を紹介したことです。このニュースはすぐに韓国政府から名誉毀損で告訴され、ネット映像も見られなくなったそうです。この米原潜は核搭載の「コロンビア号」とみられ、ハワイを出港して今回の米韓合同演習に参加していたが、別の原潜が帰還しているのにいまだにハワイに戻っていないとのことです。
  以上のことが事実だとすれば、とんでもない情報操作によって軍事的緊張を煽っていることになります。日本のマスコミがこれらのことを追跡取材しないのが不思議です。政府の発表だけを報道していれば、情報操作に加担して戦争遂行のお先棒を担いだ歴史を繰り返すことになります。私たちにも、報道を鵜呑みにしない姿勢が求められています。
民意をゆがめる比例定数削減(市政研ニュースNo.348号:2010年7月12日号 より)
 政治の世界では「数は力なり」とされ、ともすれば少数意見や民主主義は二の次です。そのような政治を変えようと、市民運動から市川房枝さんや中山千夏さんなどが国政に参加し活躍してきましたが、全国区が廃止されて小選挙区比例代表並立制になってからは、少数派が国政に参加することはほぼ不可能になってきました。小選挙区制度は少数政党に不利な制度だからです。
  あるNPOが前回衆議員選挙を元にシミュレーションしたところ、仮に全国比例代表制であったなら前回は、民主206(308)、自民129(119)、共産34(9)、社民20(7)、公明55(21)が本来の民意であるとのことです(カッコ内は現有議席)。現行の小選挙区比例代表並立制でも民意が大きくゆがめられていることがわかります。ところが、民主党は参院選マニフェストで、「衆議院の比例定数を80削減」と、現行制度のさらなる改悪を打ち出したのです。
  自由法曹団は、2007年参議院選挙の結果に衆議院比例定数80削減をあてはめると、自民・民主両党は、得票率67.56%で、381議席(議席占有率96.3%)を得ることになり、公明・共産・社民などの少数政党は、得票率32.44%で、議席はわずか19議席(議席占有率4.7%)しか獲得できないことになると指摘しています。そして、衆院比例定数削減は民意を大きくゆがめ、一定の国民の支持のある少数政党を衆議院から事実上排除するものであり、国民主権と議会制民主主義を否定する暴挙であると批判しています。
  民意を反映しないような選挙制度改悪を提唱したことも、民主党敗北の一因だと思います。比例定数削減ではなく、小選挙区制度の見直しこそ提唱すべきでした。
勇気をもらったふたつの講演会(市政研ニュースNo.347号:2010年4月30日号 より)
  昨年末、ふたつの印象に残る講演会に参加しました。地雷・子ども兵・小型武器に取り組むNPO法人テラ・ルネッサンス理事長・鬼丸昌也さんの講演会「僕は13歳、職業、兵士」と、日本環境学会会長・和田武さんの講演会「光と風と水~自然エネルギーの可能性~」です。
鬼丸さんによると、現在推定で、世界70カ国に30万人以上の子ども兵が存在するとのことです。アンゴラやコンゴなど、石油やダイヤモンド、携帯電話等の原料である希少鉱物の利権を巡って先進国資本も絡んだ内戦が長期間続いている国々です。その中で子ども達がさらわれ、暴力と洗脳によって子ども兵にされています。「逃げようとすると耳を切り落とされ、殺される」、「母の腕をナタで切り落とさないと二人とも殺すと言われ、そうした」など、想像を絶するような過酷な状況に置かれている子ども兵の実態を聞きました。また、世界中で毎年50万人、毎分1人の命が小型武器によって奪われているとのことです。
深刻な話にもかかわらず、鬼丸さんはとても明るいキャラの若者でした。それは、このような状況でも変えることができるという確信を持って活動しているからだと思いました。彼によると、年間1兆ドルの世界の軍事費を回せば、飢餓に苦しむ8億人の食糧援助(980億ドル)、地雷撤去(330億ドル)、砂漠化防止の緑化(87億ドル)、途上国の債務解消(1720億ドル)などができるとのことです。
また、和田さんによると、このままエネルギー浪費を続ければ、今世紀末には気温が最大で6℃上昇し、生態系の絶滅、伝染病の蔓延、食糧生産の低下、水不足など、地球環境破壊が進むが、世界のGDPの1%あれば地球温暖化は防ぐことができるとのことです。軍事費はGDPの2.5%なので、軍事費の半分弱で地球環境は守られ、自然エネルギーに転換するので石油資源争奪などの戦争も減少するというお話でした。
お二人の講演内容は、期せずして、おろかな戦争をやめさえすればあらゆる問題が解決できるということを客観的数字によって示すものでした。いま普天間基地をめぐって民主党がおかしくなっていますが、非軍事・平和の立場で、世界中から基地をなくす方向でアメリカに働きかけることが緊要です。そして、飢餓や環境などの課題解決にこそ日米の協調を強めるべきでしょう。

 

普天間基地とマスコミ報道(市政研ニュースNo.346号:2009年12月26日号 より)
 歴史的な政権交代から3ヶ月が経ちました。いまマスコミは、沖縄の普天間(海兵隊基地)問題で鳩山首相を袋叩きにしています。移転先を先延ばししていると批判し、「日米同盟が危うくなる」「米側の我慢も限界」など連日書きたてています。 
そもそも、宜野湾市にある普天間基地問題は、2004年に米軍大型ヘリが市内の大学に墜落炎上した事件に象徴されるように、市街地の真ん中にある危険な米軍施設を移転するというのが発端でした。前政権の時、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沖に移設することが合意されましたが、国土面積のわずか0.6%に対して75%もの米軍基地を押し付けられている沖縄の人たちにとって、県内移設は受け入れられるものではありません。だからこそ、このたびの総選挙で辺野古への移設を進める自民党が沖縄(4選挙区)で全滅したのです。従って、新政権が沖縄の人々の立場に立って県外移設を求めるのは当然ですし、義務でもあります。
日本が県外移設を主張し続けると普天間基地の移設が白紙に戻り、日米同盟が危うくなるというマスコミの論調ですが、本当にそうなのでしょうか。実は、マスコミが報道しない事実があります。
普天間基地を抱える宜野湾市は以前から米軍に関する情報を収集・分析していますが、米軍が2014年までに沖縄海兵隊のほとんどをグアム島に移転するという計画文書(「グアム統合軍事開発計画」)を入手、米軍担当者にも確認しているということです。この計画は、グアムを世界でも有数の総合的な軍事拠点として開発するというものです。宜野湾市の伊波洋一市長は、その資料を根拠に、辺野古に新しい基地をつくることなく普天間基地を移設することができると、鳩山政府に対して求めています。【この内容は宜野湾市役所のホームページで見れます。また、日テレニュース24のホームページで、伊波市長のインタビュー(30分)が、ノーカットで見れます。http://www.news24.jp/articles/2009/12/11/04149543.html】
マスコミがすべきことは、この資料を報道し、危険な普天間基地の移設と米軍基地の縮小をアメリカに対して毅然と交渉するように鳩山政府に求めることではないでしょうか。

 

配偶者控除廃止に賛成!(市政研ニュースNo.345号:2009年10月31日号 より)
 中学校卒業まで支給する月額2万6千円の子ども手当が、鳩山政権の目玉として注目されています。子育て・教育は社会の責任であるとの考え方を日本に定着させるための重要な政策であるという説明に納得していますが、子ども手当ての財源確保策である所得税の配偶者控除廃止に対して、対象児童のいない世帯は負担が増えるので反対という人がいます。
私は配偶者控除廃止に賛成です。同じように配偶者扶養手当も廃止すべきと考えています。10年余り前の1998年12月議会でこの問題を取り上げました。
Q 国の男女共同参画審議会が、性別による固定的な役割分担などを反映して結果的に男女に中立的に機能しないおそれのある社会制度、慣行を見直すと答申した。配偶者扶養手当は、公務員、民間を問わず被扶養者はほとんどが妻であり、まさにこれに該当する。見直すべきではないか。米子市職員で配偶者扶養手当を受給している人は何人で、受給者の男女内訳はどうか。年間の支給総額は幾らか。
A 配偶者手当が結果的に性的役割分担を助長し、あるいは強化しているという指摘があることは認識しているが、政府レベルで男女共同参画について立法措置を含めて議論されているので、いましばらく見守りたい。配偶者扶養手当を支給している職員数は、男性185人、女性1人で、支給総額は年間約3,500万円である。
Q 1995年に社会保障制度審議会は、妻を被扶養者と位置づけてきた世帯単位の社会保障制度を今後個人単位に切りかえ、配偶者控除とか配偶者手当は見直すと答申している。96年の経済審議会でも、配偶者控除の廃止、主婦優遇の社会保険の見直し、配偶者手当の廃止を答申している。これらの資料も集め、配偶者手当の見直しについて研究していただきたい。
A これから先、勉強をしていきたい。
当時は、「あいつは何を言ってるんだ?」という空気でしたが、時代が変わったことを喜んでいます。男女共同参画社会を目指す上で、配偶者控除や配偶者扶養手当の廃止は当然のことです。

 

民主党政権に全面委任は危険(市政研ニュースNo.344号:2009年8月28日号 より)
 このニュースが発行される頃は多分、民主党中心の政権が誕生しているでしょう。政権交代の意味は大変大きいと思います。まず、自民党中心の政権は永久に変わらないかのように思い込まされていた国民が、自分たちの投票行為で政権を変えることができるという経験をしたことです。また、自民党の政治家と官僚が癒着して国民の税金を食い物にしていた実態が明らかにされ、税金の使途が透明化される可能性が生まれたということです。
ただ、喜んでばかりもいられません。民主党の政策にはとんでもないものもあります。
ひとつ目は、平和に関する政策です。国連軍に積極的に参加し、憲法9条で禁じられている集団的安全保障と呼ばれる軍事行動に自衛隊を派遣しようとしています。さらに、海賊発生海域に自衛隊を派遣することも認めています。憲法9条を変えようという考えの議員も多い民主党は要注意です。
ふたつ目は、原子力発電に関する政策です。「エネルギーの安定供給の観点もふまえ、国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組みます」、「(原子力発電所の使用済み燃料について)再処理技術の確立を図ります」などと書いています。原爆も原発も同じ放射能を生み出します。『核と人類は共存できない』というのが、多くの犠牲を出しながら私たちが得た教訓ではないでしょうか。原発は廃止が当然ですし、ましてや、他国でもやめている使用済み燃料の再処理など論外です。 民主党の間違った政策を変えさせることが、政権交代を実現させた私たちの次の仕事です。

 

新型ウィルス出現の真の原因(市政研ニュースNo.343号:2009年7月16日号 より)
 連日報道されていた新型インフルエンザ騒ぎは、ピタッとやんだ。関西では、保育所、小中学校、デイサービスなどが閉鎖され、イベントも中止されたが、今ではなにもなかったかのようだ。
新型インフルエンザについて、私も参加している『自治体議員政策情報センター』のメーリングリストで、「弱毒性であることも判明しており、季節性のインフルエンザへの対策の延長線上で考えてよい」、「世界中で検疫を強化しているのは日本や中国などごくわずかであり、WHOは、水際対策も検疫も無効として推奨していない」などの情報が、早い段階から流れていた。5月末になってやっと、羽田空港の現役検疫官が、政府の水際対策を国会で批判したとの報道がされ、今回のインフルエンザ対策の妥当性が問題になりつつある。
しかし、新型ウイルス出現の真の原因については、日本のマスコミは何故か報道しようとしない。そこで、メーリングリストでの情報を紹介したい。
― 世界的に権威のある科学雑誌「サイエンス」の論文は、すでに2003年に、大量の抗生剤とホルモン剤を投与する大規模養豚では遺伝子の変異や拡大の可能性は格段に上昇すると指摘している。今回の新型インフルエンザの最初の感染源と言われているのはメキシコのラグロリアという町だが、そこには豚肉の生産・加工で世界最大規模の多国籍企業の子会社がある。AP通信によれば、ここでは、1万頭の豚が狭く不潔な場所に押し込められ、薬のカクテルをシャワーで毎日浴びせられている。豚舎の下から流れ出た排泄物は自動的にプールに貯められ、ここからものすごい悪臭と、大量のハエが発生し、あらゆる疫病の発祥源となっている。―
そして、驚いたのは、住民の健康を蹂躙し、儲けを優先して生産されるメキシコの豚肉は、9割が日本に輸出されているということである。私たちの食生活がメキシコの人を苦しめ、多国籍企業を儲けさせ、新型インフルエンザ出現の原因になっているなんて!
多国籍企業を規制して農業を守り、地産地消の食文化に立ち帰らないと、これからも新たなウイルスの出現に脅かされ続けることになるだろう。

 

市議会議長選に立候補しました(市政研ニュースNo.341号:2008年8月11日号 より)

 米子市議会は申し合わせにより、2年ごとに正副議長選挙を行っています。6月議会最終日の議長選挙に会派「未来」(※)から候補者を立てることになり、最年長(?)の私が立候補することになったのです。
  結果は、新風(11人)、公明党(4人)、一院クラブ(1人)の3会派連合が16票、一方、未来(5人)、自民クラブ(6人)、共産党(2人)の3会派連合が13票で、正副議長選挙とも敗れました。
  議長選挙に限らず議会人事は会派の数で決まるので、結果は最初からわかっていました。「だったら、敢えて候補者を立ててまで対立しなくてもよかったのでは?」と思われる方もあるでしょう。しかし、新風・公明党はこれまで市民に開かれた議会運営に消極的で、インターネット中継や正副議長選立候補者による所信表明制度導入に対して、反対してきました。
  そこで、議会改革についての私たちの提案をマスコミにも明らかにし、議会改革を議長選挙の争点とするために、対立候補として私が立候補することにしたものです。新議長に議会改革の課題を突きつけ、取り組みを促すことも目的でした。つまり、何が何でも議長をとるために多数派工作をすることなど、最初から全く考えていませんでした。
  「でも、自民クラブと共産党に働きかけたのだから、結局波多数派工作をしたのでは?」という疑問が聞かれそうですね。実は、自民クラブと共産党とは、多数派による偏った議会運営をさせないために批判票が大切であるということで、考え方が一致したということです。
  選挙結果がマスコミで報道されたので、多くの市民の方から「惜しかったですね」「あと2票、何とかならなかったのですか?」という声をかけられました。また、何人かの市職員からは、「僅差の結果に驚いた」という声も聞かれました。 
  「議会や議員が何をやっているか見えない」「議会としてのチェック機能が果たされていない」など、議会に対して強い批判が市民の中にあります。議員個人はもちろんのこと、議会全体としても市民の中に入り、現場の声を聞き、市民と一緒に政策づくりをすることが求められています。市民に役に立つ議会に変えなければなりません。
  もし議長選挙で勝っていたら、市民と議会の意見交換会や、市民も参加する議会主催のシンポジウムの開催などを提案し、少しは議会を変えることができたのではないかと思います。次の議長選挙は2010年の市議会議員選挙後です。そのときには、議会改革派が多数になるようにしたいですね。
  あっ!それより前に、来年4月は市長選挙だ。市民派市長を作ることのほうが先だった。
※「未来」=5人の議員で構成。市民との協働の市政をめざし、情報公開・市民参加を大切にしている。議案の賛否に対する会派拘束はない。

 

岩国市長選(市政研ニュースNo.339号:2008年2月21日号 より)
 いま岩国が注目されています。国の兵糧攻めに屈することなく、果敢に国と戦っている市長と市民の姿が全国の心ある人々に感動を与えています。
発端は一昨年5月の日米両政府による在日米軍再編最終報告合意でした。主な内容は、米海兵隊岩国基地に米海軍厚木基地の空母艦載機59機、米軍普天間飛行場の空中給油機12機を移転するというもので、駐留機は現在の57機から120機と倍増し、機数では極東最大級となります。今でさえ航空機騒音などの基地公害に悩まされている市民はとても認められないと、一昨年3月に行われた艦載機部隊移転の賛否を問う住民投票で、87%という圧倒的多数で反対の意思を明らかにしました。また、その後4月に行われた市長選挙においても移転反対を鮮明にしていた井原市長が圧勝しました。
ところが、国は岩国市が進めている市庁舎建設について、交付が予定されていた補助金のうち07年度分としての35億円を全額カットし、補助金が欲しければ移転を受け入れるよう迫ってきたのです。もともと、この補助金は沖縄普天間基地の空中給油機移転を岩国市が受け入れた見返りとして交付されたものであり、約49億円の補助金のうち05年度と06年度で計14億円が約束どおり交付され、07年度で35億円の交付を受けることになっていたものです。
国が理不尽な圧力により移転受け入れを強要することは、岩国市民の艦載機部隊移転反対の圧倒的な民意を踏みにじるだけでなく、地方自治の否定でもあります。井原市長はこのようなことは許せないと、市庁舎建設費として借金を充てることを議会に提案しましたが、国の補助金が欲しい議員が多数を占める議会は5度にわたってこの議案を否決しました。そこで、井原市長は再度民意を確認するために、辞職・市長選挙への再出馬という手段をとり、その選挙が2月3日に告示されます。
じっとして居れないので、岩国に応援に行ってきます。結果に注目してください。 

 

六ヶ所村再処理工場(市政研ニュースNo.338号:2007年11月30日号 より)
  気になりながらも、目の前のことが精一杯で詳しく知ろうとしなかったことって、ないですか?ぼくの場合は、六ヶ所村再処理工場の問題がそれです。青森県六ヶ所村に原発の使用済み核燃料からプルトニウムを抽出するための再処理工場が完成し、試運転を始めたことは知っていましたが、近くの島根原発と比べると関心ははるかに低いものでした。しかし、この度、依頼された反対署名を集めるために資料を読み、大変な問題であることをあらためて思い知らされました。
再処理工場では、原発が1年間に環境中に放出する放射生物質(放射能)を、1日で放出します。世界で2カ所(イギリスとフランス)しかない再処理工場では、放出される放射能で、140㎞も離れた町でも子どもの白血病が多発し、海流に乗って北海全体が汚染されています。マスコミではほとんど報道されませんが、六ヶ所再処理工場の試運転では放射能を含んだ水が何度か漏れ出し、作業員の内部被曝事故も起きています。
住民団体が放流口から1万枚のハガキを流して実験したところ、茨城県に多く漂着しました。青森県から房総半島までの海が汚染される可能性が高いことが明らかになったのです。本格稼動(来年後半に予定)されると、周辺住民や作業員の被曝が広がると共に魚介類が放射能汚染され、日本の食糧が大変なことになります。一人でも多くの方にこの問題を知っていただき、再処理工場の本格稼動をストップしたいものです。
六ヶ所村再処理工場についての資料を希望される方はご連絡下さい。

 

携帯電話(市政研ニュースNo.337号:2007年7月15日号 より)
 わが家(内町)から公会堂に向かう途中に用件を思い出し、電話をするために公衆電話を探しました。驚いたことに、米屋、たばこ屋、下駄屋などの店先から公衆電話がすべて消え、あったはずの電話ボックスさえ見あたりません。結局、記憶にあった10カ所の公衆電話はすべてなくなっていることがわかりました。聞いたところ、NTTは一ヶ月の売り上げが2万円以下の公衆電話を撤去しているとのことです。
それだけ携帯電話が普及しているということですが、若い人が携帯電話を耳に当てて長電話をしている光景を見るにつけ、この子たちはこれからどうなるのかと暗澹とした気分になります。
携帯電話から発する電磁波が脳腫瘍、頭痛、記憶機能の低下、めまい、不眠などの原因になっているとの研究者の指摘は多くあります。中継鉄塔からの電磁波は、使用しない人にも被害を与えています。イギリス政府は16才未満の使用自粛を勧告し、ドイツでも小児科学会が子どもの使用制限を勧告しています。アメリカでは、携帯電話と脳腫瘍の因果関係を認めて労災認定した判決も出ています。世界のこのような流れに対して、日本政府は何の対策もとらないばかりか、国民に対して情報提供さえ行っていません。薬害エイズやアスベストなどと全く同じ構図です。
子どもたちや自分たちの身を守るためには、私たち自身が対策をとるしかありません。携帯電話の危険性と正しい使い方を紹介する本やパンフレットは多く出版されています。ぜひ一読をお薦めします。
とりあえずできることは、携帯電話のつながり始めは強い電磁波を発生するので耳から離すこと、イヤホンマイクを使用すること(電磁波の影響が50分の1~130分の1に低下)、子どもは影響が大きいので持たせないこと、などです。それと、できるだけ公衆電話を使いませんか。これ以上公衆電話がなくなれば、完全に携帯電話に支配されてしまいます。

 

国民投票法案(市政研ニュースNo.336号:2007年5月10日号 より)
  安倍首相は、日本が米軍と一体となって世界中で戦争が出来る国となることをめざしています。そのためには、戦後60年以上一度も他国民を戦闘行為で傷つけることなく、その崇高な平和主義が世界中から高い評価を受けている日本国憲法第9条が、じゃまでじゃまでたまりません。
憲法を変えるためには国民投票を行い、その過半数の賛成を得ることが必要です。この国民投票の手続きを定める法案が4月13日に衆院本会議を通過し、5月中頃にも成立しそうな情勢です。しかし、審議されている国民投票法案には様々な問題があります。
まず、最低投票率の規定がありません。このままでは、低投票率の場合、賛成が全有権者の1割や2割であっても改憲が成立することになります。また、投票方式についても一括して賛否を問う形態にするのか、「改正」条項ごとに賛否を問う方式にするのか、曖昧な規定になっています。9条など個別の条項ごとに賛否の意思を表示できる提案方法及び投票方法とすべきです。さらに、国民投票運動についてのマスコミ報道及び評論に対する制限、公務員や教育者の運動の制限など、国民投票法案についてはまだまだ議論すべき課題が多くあります。
そして、この法案の一番の問題点は「憲法審査会」の設置が盛り込まれていることです。「憲法審査会」とは、改憲原案を作成・審査する機関です。この法案は改憲の手続きを定めるだけの単なる手続き法ではなく、成立したら一気に改憲に向かうことを可能にする法律なのです。
憲法という最高規範の法律を変えるための重要な法案は、主権者が自ら責任を負った判断と権利を行使するためにも、国会の中だけの議論で拙速に進めずに、国民的にじっくりと腰を据えて議論を行なう必要があります。5月3日は憲法記念日です。

 

放射性高レベル廃棄物誘致の動き(市政研ニュースNo.335号:2007年3月23日号 より)
 「そちもワルよのを~」と言いながら悪代官が小判を懐に入れ、庶民を食い物にする悪徳商人と結託する。水戸黄門のような勧善懲悪ドラマなら悪い奴がよく分かり、黄門様がやっつけてくれたらスキッとする。しかし、いまの時代は庶民をいじめる悪い奴の姿が見えにくい。平成の大合併などがそうだ。そんな中、高知県東洋町で黄門の時代のような露骨な悪事が行われている。
いま、原子力発電環境整備機構(原環機構)が原発の使用済み核燃料を再処理した後にできる高レベル放射性廃棄物の地下埋設施設受け入れ自治体を公募している。だが、燃料ウランの百万倍の放射能があり、百万年の管理が必要とされる危険な廃棄物の受け入れに手を挙げる自治体はない。そこで国は、金の力で強引に計画を進めることにした。処分施設誘致に応募しただけで10年間億円を2年間交付する、処分場となったら年間2百億円を超える交付金や固定資産税が見込めるというのである。
この巨額の交付金目当てに誘致の動きが全国にある。そのひとつが高知県の東洋町である。町長が今年1月、独断で全国の自治体で初めて応募したが、住民の大多数は猛反対した。議会も放射性廃棄物の持ち込みに反対する決議と、町長に対する辞職勧告決議を可決した。高知県知事と徳島県知事、両県議会、周辺市町村も反対している。しかし、原環機構は応募を受理したばかりか、国といっしょになって、町長や推進派の町議、漁協組合長などを利用して地元に推進組織をつくり、あくまで処分施設建設を進めようとしている。
そこには、何十年もの間、反対運動を金の力でねじ伏せて原発を作り続けてきた国や電力会社のおごりが見える。いくら住民が反対しようが、県や議会が反対しようが、「最後にものをいうのは金よのを~」とせせら笑っている国や電力会社を、絶対に許してはいけない。 

 

格差社会(市政研ニュースNo.334号:2007年1月9日号 より)
 「『いざなぎ景気』を超えて戦後最長の景気拡大」、「東京証券取引所の上場企業はバブル期を超えて四年連続で最高利益を更新」などと報道されている。一方では、『ワーキングプア』という言葉が普通に使われるほど、多くの人が格差社会のひずみに苦しんでいる。好調な企業業績は人員削減などのリストラを進めた結果であり、それが証拠に個人消費のマイナス幅は拡大している。それなのに、十二月一日の政府税調答申は法人税率の引き下げの検討、企業の減価償却制度の拡充など、企業を更に優遇する方向を打ち出した。
  一方で、政府は生活保護費を四百億円削減し、生存権まで否定するようなことを平気でやろうとしている。昨年六月からは高齢者の住民税が上がり、国民健康保険料、介護保険料も負担が増えた。障害者は自立支援法施行によって自己負担額が増え、自立生活そのものが奪われている。弱肉強食で、他人への思いやりのかけらもないこのような状況は、戦後日本社会で初めてである。企業と一部の人たちだけが儲けるための『規制緩和』、『構造改革』なのに、聞こえの良い言葉に国民が騙されてきた結果である。
  南米では十年前に、アメリカによる『規制緩和』の押しつけで格差社会が拡大し、今の日本のような状況にあったという。そして現在何が起こっているか。相次ぐ左派政権の誕生で、南米大陸全体が反米一色に染まろうとしている。日本では『革命』という言葉が絶えて久しいが、南米諸国を見習って『革命』を叫ぶくらいの激しさがないと、このような状況を変えることはできないのではないかと思う今日この頃である。
 
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